交通死亡事故の相続人

hanya.jpg死亡事故の場合,加害者に対して損害賠償請求をできるのは誰ですか?

 

 

02dog.jpg死亡した被害者本人の損害については,これを相続した相続人が請求者になる。相続人の範囲や相続分は民法で規定されているが,詳しくは下記の表のとおりだ。

 

  

存命している被害者の遺族 相続分
配偶者 兄弟姉妹 配偶者 兄弟姉妹
1/2 1/2 0 0
  1/2 1/2 0  
  1/2 1/2   0
  2/3   1/3 0
    1 0 0
    1/2 1/2    
    2/3   1/3  
    3/4     1/4
      1 0  
      1   0
        1 0
      1      
        1    
          1  
            1

【補足事項】

1.子が死亡しているがその子供(被害者の孫)がいる場合, 孫が子の相続分を相続して相続人となる(代襲相続)。

2.兄弟姉妹が死亡しているがその子供(被害者の甥・姪)がいる場合,甥や姪は兄弟姉妹の相続分を相続して相続人となる(代襲相続)。

3.親が死亡しているがその親(被害者の祖父・祖母)がいる場合,祖父や祖母が相続人となる。

4.同順位の相続人が複数いるときは,その順位に対する相続分を同順位内で均等に分ける。ただし,片親だけが同じ兄弟姉妹の法定相続分は,両親が同じ兄弟姉妹の2分の1。

 

 

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 賠償請求は,相続人が全員揃ってしないといけないのですか?

 

 

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 相続人各人がバラバラに賠償請求したら加害者側(保険会社側)は対応しようがないので,相続人の中から代表者を選び,その代表者が一括して交渉窓口となるのが一般的だ。弁護士が介入する際も,通常はその弁護士が相続人全員から委任を受けることになる。

葬儀関係費

shikushiku.jpg葬儀費は,実際に支出した額を賠償してもらえるのですか?

 

 

02dog.jpg訴訟での基準では,葬儀関係費(葬祭費,供養料,墓碑建立費,仏壇費等)は原則として合計150万円,ただし実際の支出額が150万円を下回る場合は実際の支出額を限度とした賠償額になっている。葬儀関係費は宗教,地域の習慣等によって規模や支出される金額が様々であることから,現在ではこのように定額化されているんだ。

 

hanya.jpg150万円以上の葬祭費が認められたり,150万円の枠とは別途で墓碑建立費や仏壇費などを認めた判例はないのですか?

 

 

01dog.jpgより高額の葬儀関係費を認めた過去の判例もないではないが,特に若年者の死亡事案であったり高額の支出を認めるべき特殊事情が絡んだ例外的なものと考えてほしい。現在では150万円の定額化が顕著だ。もちろん,そうした特殊事情を十分に主張・立証できるならば,裁判所が認めるかどうかは別として,被害者側としては請求には加えるべきだろう。

 

aryarya.jpg香典返しとして結構な金額を支出したのですが,これも損害として請求できますか?

 

 

03dog.jpg香典返しは損害とは認められない。一見被害者に不利に見えるかもしれないが,その逆にもらった香典を損害額から差し引く(損益相殺)ことはしない扱いになっているので,バランスが取れていると言えるだろう。

 

mumutt.jpg香典も香典返しも,損害云々というより故人や遺族との人間関係や自然な心情から行われる慣習だという価値判断がありそうですね。

死亡慰謝料

mutt.jpg交通死亡事故慰謝料について教えて下さい。

 

 

01dog.jpg交通死亡事故の場合に発生する慰謝料には,「本人分の死亡慰謝料」,「近親者慰謝料」,「死亡に至るまでの入通院慰謝料(傷害慰謝料)」の3種類がある。近親者慰謝料については別の記事で説明しているのでそちらを参照してほしい。

 

hanya.jpg死亡事故でも入通院慰謝料(傷害慰謝料)が発生するのですか?

 

 

02dog.jpg即死の場合は発生しないが,事故から死亡までに日数がある場合は,傷害事故と同様に入通院期間に応じた慰謝料が発生する。入通院期間といっても死亡に至る重篤な事故であれば入院のみで通院はないのが通常だが。「死亡に至るまでの精神的苦痛」は「死亡自体の精神的苦痛(死亡慰謝料)」とは別,という考え方があるからだろう。

 

aryarya.jpg死亡慰謝料には基準額があると聞くのですが・・・。

 

 

03dog.jpgいわゆる「赤い本」の基準では,以下のようになっている。なお,これは本人分の死亡慰謝料と近親者慰謝料の両者を含んだ基準額(→近親者慰謝料)。


 

一家の支柱 2800万円
母親,配偶者 2400万円
その他(独身男女,幼児・子供,高齢者等)     2000〜2200万円

 

hanya.jpg一家の支柱」とは具体的にどんな場合を指すのですか?

 

 

01dog.jpg一家の支柱」とは,被害者の世帯が主としてその被害者の収入によって生計を維持していた場合をいう。したがって,被害者が単身者でも,実家の高齢の父母に仕送りをしていた場合などには,一家の支柱と評価される余地がある。

 

hanya.jpg必ずこの基準どおりの金額になるのですか?

 

 

02dog.jpgそうとは限らない。この基準はあくまで裁判所が公平迅速に慰謝料額を定めるための目安であって,年齢,家族関係,生前の生活状況その他個別具体的な斟酌事由により増減があり得る。なお,このような被害者の属性に着目した増減のほか,事故態様や加害者の態度が別途の慰謝料増額事由になることがあるが,これについては別の記事で解説する。

 

mumutt.jpg確かに一律に決められてしまうというのは納得がいかないですね。個別具体的な事情に応じた金額にしてくれるなら安心です。

 

03dog.jpgいや,そこは誤解しないで欲しいのだが,増額だけでなく減額の方向でも個別具体的な事情が斟酌されるということだよ。もっとも基準の枠内以下に減額されることは多く無いが。逆に増額もそう簡単に認めてくれるわけではない。もちろん,被害者側の弁護士としては最大限の慰謝料となるよう主張・立証するが,裁判官の裁量にも左右されるし,事故態様や加害者の態度など別途の慰謝料増額事由がある場合は別として,被害者側の属性だけではよほど特殊な事情がない限り極端な増減はされないものだということは理解しておいて欲しい。

 

mutt.jpgやはり「基準」というのはそれなりに重みがあるのですね。

 

交通死亡事故の近親者慰謝料

shikushiku.jpg死亡事故での遺族の精神的苦痛はどのように賠償されるのですか?

 

 

02dog.jpg死亡した被害者本人の損害には「被害者本人の精神的苦痛に対する慰謝料(死亡慰謝料)」が含まれているが,それとは別に,近親者も死亡によって生じた精神的苦痛について近親者固有の慰謝料を請求できる。明文で規定されている請求権者は父母,配偶者,子だ(民法711条)。

 

mutt.jpg相続人と同じということですか?

 

 

02dog.jpgいや,相続人とは必ずしも一致しない。例えば,遺族が父母,配偶者,子の場合,被害者本人の損害を請求できるのは相続人となる配偶者と子だけで父母は相続人とはならない。しかし,この三者全員が近親者固有の慰謝料を請求できるから,この場合の父母は相続人でない固有の慰謝料請求権者となる。

 

hanya.jpg兄弟姉妹は近親者固有の慰謝料を請求できないのですか?

 

 

03dog.jpg判例上は,民法711条で挙げられた父母,配偶者,子に類似する者(内縁の妻,祖父母,兄弟姉妹など)についても,被害者との関係が特に深い場合には固有の近親者慰謝料の請求を認める余地があるとされている。
ただし,相当に例外的な場合であり,原則は父母,配偶者,子のみと考えてほしい。

 

hanya.jpg近親者慰謝料を請求できる人が多ければ多いほど,賠償総額は増えるのですか?

 

 

02dog.jpg必ずしもそうではない。交通事故の裁判実務上,死亡慰謝料は被害者の属性等に応じて基準額が定められている(→死亡慰謝料)。この基準額は,死亡した被害者本人分の慰謝料と近親者固有の慰謝料の総額として定められているので,近親者慰謝料の請求権者が増えても基準額内部での配分が変わるだけで,直ちに総額が増えるわけではない。

例えば,一家の支柱である男性が死亡し,その妻と子1名がいる場合,一家の支柱の死亡慰謝料の基準額は2800万円なので,死亡慰謝料は本人分2300万円,妻固有の分300万円,子固有の分200万円などと配分されるが,子が2名だった場合は本人分2100万円,妻300万円,子2名は各200万円,などとされることが多い。

 

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総額が増えないとすると,例えば存命しているのが被害者の配偶者と子だけで相続人と固有の慰謝料請求権者が一致している場合,相続した本人分の慰謝料とは別に近親者固有の慰謝料の請求をする意味はないのですか?

 

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意味がないわけではない。そもそも死亡慰謝料の基準額はあくまで基準額,目安にすぎず,個別具体的な事情により増減があり得る。近親者慰謝料を請求すれば,陳述書や尋問の形で近親者の供述を積極的に顕出させることになるので,慰謝料総額を算定する材料が増えるとも言える。そもそも近親者がいるのに近親者慰謝料を請求しないのは裁判官にも不自然な印象を与えるのではないだろうか。近親者固有の慰謝料は請求するのが一般的だろう。

 

死亡逸失利益 〜算定方法〜

hanya.jpg後遺障害逸失利益についてはすでに聞きました。では,被害者が死亡した場合の逸失利益はどのように算定するのですか?

 

01dog.jpg死亡逸失利益は,「基礎収入×(1ー生活費控除率)×就労可能年数に対応したライプニッツ係数」と算定される。

 

 

mutt.jpg後遺障害逸失利益の算定式と比較すると,「労働能力喪失率」が出てきませんね。

 

 

02dog.jpg理屈上は死亡逸失利益の算定でも労働能力喪失率を乗じるべきなのだが,死亡の場合の労働能力喪失率100%を乗じても計算結果に変わりはないので,省略しているだけだと考えればいい。

 

mumutt.jpgなるほど。死亡の場合の労働能力喪失率は100%に決まっていますからね。

 

 

03dog.jpg基礎収入就労可能年数は後遺障害逸失利益の場合と同様だ。一方,生活費控除率は後遺障害逸失利益では原則として登場しないので,これについては次回詳しく説明するよ。

死亡逸失利益 〜生活費控除その1〜

hanya.jpg生活費控除って何ですか?

 

 

02dog.jpg死亡逸失利益というのは,簡単に言えば,事故で死亡しなければ本来得られたはずの将来の収入だ。ところが,例えば年収500万円の人でも,その500万円が全額貯蓄になるわけではないね。

 

mutt.jpg生きていく以上は,当然収入の何割かを家賃や食費などの生活費に使いますね。

 

 

01dog.jpgそう。一方,死亡した場合はもう生活費はかからない。そこで,死亡事案では,本来得られたはずの将来の収入から生活費分を差し引いた額を逸失利益として算定するんだ。このとき,基礎収入の何%を生活費とみなすかという数値が生活費控除率となる。

 

mutt.jpg後遺障害逸失利益のときは,生活費控除は行われませんね。

 

 

03dog.jpg後遺障害事案では,被害者は生きていて事故前と同様に将来も生活費を使っていくので,生活費控除は問題とならない。ただし,遷延性意識障害などの場合に生活費控除が争点となることがある。→遷延性意識障害の争点1 〜生活費控除〜

 

aryarya.jpgでも,生活費をいくら使うかなんて人それぞれですよね。生活費控除率なんて一律に定められないのでは?

 

 

02dog.jpgもちろん,厳密には被害者が節約家か浪費家かなどによって生活費は変わって当然だが,それを被害者ごとに個別具体的に判断するのはほぼ不可能だ。そこで,被害者の属性や家族構成などによって大別し,それぞれで一定割合の生活費控除率を用いることになっている。具体的な生活費控除率は次回説明するよ。

死亡逸失利益 〜生活費控除その2〜

mutt.jpg具体的な生活費控除率の基準を教えて下さい。

 

 

01dog.jpgいわゆる「赤い本」基準では,死亡した被害者の属性により以下の生活費控除率を用いることが原則とされている。

 

 

一家の支柱

女性(主婦,独身,幼児等を含む)

男性(独身,幼児等を含む)

被扶養者1人 被扶養者2人以上
40% 30% 30% 50%

 

hanya.jpg一家の支柱」って何ですか?

 

 

02dog.jpg一家の支柱とは,被害者の世帯が主としてその被害者の収入により生計を維持していた場合をいう。例えば,世帯を持つ会社員男性が死亡し,その妻が専業主婦か短時間のパート程度の兼業主婦で,未就労の学生の子1名がいた場合,被害者は被扶養者2人を養う一家の支柱と評価され,生活費控除率は30%となる。

 

aryarya.jpg男性は通常50%だけど,一家の支柱にあたる場合は40%や30%になるのですね。普通に考えると,独身男性より世帯持ちの男性のほうがたくさん生活費を使っていて,生活費控除率を高くすべきようにも思えますが,なぜ逆に低い値にされているのですか?

 

03dog.jpg生活費控除率は,純粋に「被害者の属性では一般的にどれくらい生活費を使うか」という観点だけではなく,調整機能的な役割も踏まえて定められている。一家の支柱生活費控除率が低くされているのは,残された遺族の生活保障という観点を重視しているためだ。同じ一家の支柱でも,被扶養者の数で率が異なるのもその理由による。

死亡逸失利益 〜生活費控除その3〜

hanya.jpg一家の支柱にあたらない場合でも,生活費控除率は女性が30%,男性が50%と差がありますね。これも調整機能によるものですか?

 

 

01dog.jpg基礎収入(実収入や平均賃金)は男性より女性のほうが低い傾向があるので,男女同じ生活費控除率だと逸失利益額は男性より女性のほうが相当に低額になってしまう。これを調整するため,女性の生活費控除率はより低くされている。

 

aryarya.jpgでも,女性でも男性と同じかそれ以上の実収入がある人もいますよね。その場合も30%の生活費控除率を用いるのですか?

 

02dog.jpgその場合は,そもそも女性の生活費控除率を男性より低くしている趣旨に合わないので,男性と同様の生活費控除率を採用すべきことになる。基礎収入として女性以外の平均賃金を採用する場合も同様だ。例えば,年少女子の逸失利益の算定では,女性平均賃金ではなく男女平均賃金を用いる場合があるが,この場合,生活費控除率を45%程度にする扱いが多い。

 

mutt.jpg基礎収入年金の場合に違いはありますか?

 

 

03dog.jpg高齢者等で年金収入のみの者については,年金の性質上,一般的に収入に占める生活費の割合が高いと考えられることから,生活費控除率を通常より高くすることが多い。ただし,逸失利益として算定される老齢年金のほかに,逸失利益として算定されない遺族年金などを受給している場合には,遺族年金によっても生活費を賄うことができたとして,老齢年金に対する生活費控除率をむしろ通常より低くする例もある。被害者側としては,生活費控除の意義や機能を踏まえた妥当な生活費控除率の採用を主張・立証してくことが肝心だ。

 

hanya.jpg就労による収入と年金収入の両方がある高齢者の場合はどうなりますか?

 

 

01dog.jpg稼働収入分のみ通常の生活費控除率を,年金収入分のみ高くした生活費控除率をそれぞれ用いて算定する場合や,両方合わせて通常よりやや高い生活費控除率を一律に用いて算定する場合など,色々な算定方法がある。

死亡逸失利益 〜生活費控除その4〜

aryarya.jpg一家の支柱のことなんですが,例えば死亡時は独身男性だったけど,近い将来結婚して一家の支柱になる予定があった場合でも,やはり「独身男性」として50%の生活費控除率にされてしまうのですか?

 

01dog.jpg将来の属性の変動をどう評価するかの問題だね。確かに,事故に遭う時期の少しの差で生活費控除率が大きく変わってしまうのは不均衡だという問題意識は有り得る。

 

mutt.jpgでは,近い将来結婚して一家の支柱になる予定があった場合,男性でも50%ではなく40%や30%の生活費控除率が認められるということですか?

 

02dog.jpg一般論として,独身男性は一定割合で将来結婚して子供を持つ可能性もあるわけだが,それを言い出したら独身男性は誰でも一家の支柱になってしまう。結納を済ませるとか,結婚式の日取りが決定していたとか,本当に近い将来の結婚が確実だったと言えるような場合でないと,一家の支柱として評価されることは難しいと考えたほうがよい。

 

hanya.jpg逆に,死亡時は被扶養者2人の一家の支柱だったけど,近い将来子供が独立するなどして扶養を離れる予定があった場合には,生活費控除率を30%でなく40%や50%にする場合もあるのですか?

 

03dog.jpgその場合も結局は近い将来にそうなる蓋然性があるかの問題だ。いつかは子供は独立すると言い出したらきりがないので,その子供がすでに成人で,学卒が間近で就職の内定もあり,近いうちに経済的に独立することが確実であったと言えるような場合や,死亡後に実際に独立した事情が認められる場合でのみ,これを生活費控除率に考慮することが許されるにすぎないと限定的に考えるべきだろう。

年金逸失利益その1

hanya.jpg年金生活者が事故で死亡した場合,将来もらえたはずの年金分の逸失利益は認められるのですか?

 

 

01dog.jpg年金の種類によって異なる。判例上,老齢年金(老齢基礎年金,老齢厚生年金,退職共済年金)や障害年金(障害基礎年金,障害厚生年金,障害共済年金)は逸失利益性が認められているが,遺族年金(遺族基礎年金,遺族厚生年金,遺族共済年金)は否定されている。

 

aryarya.jpgなぜ遺族年金逸失利益性が否定されているのですか?

 

 

02dog.jpg遺族年金逸失利益性を否定した最高裁判例では,その理由として遺族年金が1「専ら受給権者自身の生計の維持を目的とした給付という性格を有すること」,2「受給権者自身が保険料を拠出しておらず給付と保険料の牽連性が間接的で社会保障的性格の強い給付といえること」,3「受給権者の婚姻,養子縁組など本人の意思により決定し得る事由により受給権が消滅するとされていて,その存続が必ずしも確実なものということもできないこと」という3点を挙げている。

 

mutt.jpgでは,死亡した被害者が自分の老齢年金のほかに遺族年金も受給していた場合には,遺族年金については一切考慮せず老齢年金だけを問題にすればいいんですね。

 

03dog.jpgところが,そうとは限らない。遺族年金の受給の有無や金額が老齢年金逸失利益の算定に影響することもある。この点は年金逸失利益の算定方法と共に次回説明するよ。

年金逸失利益その2

hanya.jpg年金の逸失利益はどのように算定するのですか?

 

 

01dog.jpg基本的には就労分の死亡逸失利益と同様の計算を行う。就労分では,「基礎収入×(1ー生活費控除率)×就労可能年数に対応したライプニッツ係数」だったものを,「年金額(年額)×(1ー生活費控除率)×平均余命年数に対応したライプニッツ係数」とするだけだ。

 

hanya.jpg生活費控除率も就労分と同じように定めるのですか?

 

 

02dog.jpg年金逸失利益生活費控除率については,通常より高くする場合が多い。これは年金が生活費として費消される割合が高いと考えられることが理由だ。就労分は30〜50%が用いられるが,年金分は60%程度とされる場合も多い。

 

aryarya.jpg前回言っていた,遺族年金によって老齢年金の逸失利益も変わってくるというのはどういうことですか?

 

 

03dog.jpg遺族年金の受給の有無と金額は,生活費控除率を何%に設定するかという点に関わってくる。年金が生活費に費消される割合が高いので老齢年金の逸失利益の生活費控除率は高くすべきという主張に対して,遺族年金も受給していたので遺族年金によっても生活費を賄うことができたと反論できるだろう。

 

mumutt.jpgなるほど,年100万円の老齢年金と年100万円の遺族年金を受給していた人は,年100万円の老齢年金だけを受給していた人より,老齢年金から生活費に回る割合は少なくて当たり前ですね。

 

01dog.jpgそういうことだ。前者の場合でも100万円の遺族年金は逸失利益としては認められないが,100万円の老齢年金の逸失利益の算定では生活費控除率を60%などの高率にする理由はなくなる。多額の遺族年金を同時に受給していた場合に老齢年金の逸失利益の生活費控除率を0%やそれに近い値で認定した裁判例は多いんだ。

 

年金逸失利益その3

hanya.jpg死亡した被害者が年金の受給開始前だった場合,将来受給する予定だった年金は逸失利益として認められるのですか?

 

01dog.jpg受給開始予定まであまりにも年数が離れすぎている場合は別として(死亡時に40代など),死亡時に既に受給資格要件を満たしている場合には,多数の裁判例が将来の年金の逸失利益性を認めている。

 

mutt.jpgどのように算定するのですか?

 

 

02dog.jpg「年金見込額(年額)×(1ー生活費控除率)×(平均余命年数に対応したライプニッツ係数−受給開始予定までの年数に対応したライプニッツ係数」と算定される。実際には,現行の年金制度では年齢に応じて年金額が変わる人も多いので(60〜64歳は特別支給の老齢厚生年金のみ,65歳以降は老齢基礎年金老齢基礎年金など),ライプニッツ係数のところは当該年金額ごとに「その年金額が受給される最終年までの年数に対応したライプニッツ−その年金額の受給開始予定までの年数に対応したライプニッツ係数」で別々に計算して,各年金額別の計算結果を合算したものをトータルの年金逸失利益とすることになる。

 

aryarya.jpg何だかややこしいですね。ところで,年金見込額はどうやって決めるのですか?

 

 

03dog.jpg年金事務所に照会するか,「ねんきん定期便」などで将来の年金見込額を立証することになる。 

 

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