入通院慰謝料(傷害慰謝料)

hanya.jpg入通院慰謝料(傷害慰謝料)はどのように算定されますか?

 

 

01dog.jpg基本的には入院と通院の期間によって決まる。多くの場合下記の表が基準として用いられ(赤い本),原則として別表1を,ムチ打ちなど他覚症状が乏しい傷病では別表2を使用する。入院・通院それぞれの該当する月数が交差するところが慰謝料額の目安となる。

 

【別表1】 (単位:万円)

  入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院   53 101 145 184 217 244 286 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346  
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344    
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341      
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338        
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335          
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332            
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326              
13月 158 187 213 238 262 282 300 316                
14月 162 189 215 240 264 284 302                  
15月 164 191 217 242 266 286                    

 

【別表2 (単位:万円)

  入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院   35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229  
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225    
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219      
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214        
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209          
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204            
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200              
13月 120 137 152 161 173 181 189 195                
14月 121 138 153 163 174 182 190                  
15月 122 139 154 164 175 183                    

 

mutt.jpg入通院期間によって機械的にこの表に当てはめるのですか?

 

 

02dog.jpg必ずしもそうではない。入院では,仕事や家庭の都合等で本来より入院期間が短くなった場合には増額が,逆に入院の必要性に乏しいのに本人希望で入院していた場合には減額があり得る。また,入院待機中の期間やギプス固定中等の自宅安静期間は入院期間と見る場合がある。

 

hanya.jpg通院についてはどうですか?

 

 

03dog.jpg通院が長期かつ不規則な場合,通院期間(始期と終期の間の日数)と実通院日数を3.5倍した日数(別表2を用いる場合は3倍)とを比較し,少ない方の日数を基準に計算する場合がある。

 

mutt.jpg具体的な傷害の程度や症状は考慮されないのですか?

 

 

01dog.jpg重度意識障害など生死が危ぶまれる状態が継続した場合や,骨折又は臓器損傷の程度が重大であるか多発した場合,手術を繰り返した場合など,傷害の部位・程度・治療経過によっては,別表1による基準額を2,3割程度増額する場合があるよ。

後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)

hanya.jpg後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)はどのように算定されますか?

 

 

02dog.jpg基本的には後遺障害の自賠責等級に応じて決まり,多くの裁判所では下記の表(赤い本)が基準として用いられる。

 

 

第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級
2800万円 2370万円 1990万円 1670万円 1400万円 1180万円 1000万円
第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
830万円 690万円 550万円 420万円 290万円 180万円 110万円

  

aryarya.jpg14級にすら該当しなければ,後遺障害慰謝料は0ということですか?

 

 

01dog.jpg基本的にはそうだ。ただし,14級に至らない後遺障害があった場合は,それに応じた後遺障害慰謝料が認められることがある。例えば,3歯以上歯科補綴の場合に自賠責では14級となるが,2歯補綴の場合は等級認定されない。この場合,14級基準の110万円よりは少ない一定額を後遺障害慰謝料として認めるなどの事例がある。

 

hanya.jpg他に等級以上の後遺障害慰謝料が認められる場合はありますか?

 

 

03dog.jpg特定の後遺障害等級の認定がなされ,より上位の等級に至らない場合に,症状によって認定等級の慰謝料に相当額を加算することがある。例えば,外貌醜状痕で12級には該当するが7級には至らないなどの場合だ。12級基準より遥かに大きいが7級基準には辛うじて足りない程度の大きさの醜状痕だった場合など,積極的に7級に近い慰謝料額を主張すべきだろう。

重度後遺障害の近親者慰謝料

shikushiku.jpg家族が交通事故で重い後遺症を負い,私が介護していかなければなりません。私には慰謝料は認められないのですか?

 

01dog.jpg死亡事故の場合には近親者慰謝料が認められるが,重度の後遺障害の場合にも「死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合」に限り,被害者本人分の後遺障害慰謝料とは別に近親者固有の慰謝料が認められる。

 

hanya.jpg具体的には,どの程度の後遺障害等級で近親者慰謝料が認められるのでしょうか?

 

 

02dog.jpg要介護状態である自賠責等級別表一の第1級・第2級であれば,ほとんどの事例で認められる。別表第二の第1級・第2級の場合や,第3級3号(精神・神経系統の障害)で家族の介護の負担が重い場合にも認められることがある。それ以下の等級では,認めた裁判例もあるが,基本的には難しいと考えて欲しい。

 

mutt.jpg慰謝料額はどのくらいですか?

 

 

03dog.jpg等級のほか,近親者と被害者の関係,今後の介護状況,被害者本人に認められた慰謝料額等を考慮して決められる。概ね50万〜数百万円というところだ。

 

hanya.jpg死亡慰謝料では,死亡した被害者本人分の慰謝料と近親者慰謝料の総額が基準として定められていると聞きました。重度後遺障害の近親者慰謝料についても同様ですか? 例えば,1級の後遺障害慰謝料の基準額は2800万円ですが,これは本人分と近親者分の総額ということなのですか?

 

01dog.jpgいや,死亡慰謝料の基準額と異なり,後遺障害慰謝料の基準額には近親者分は含んでいない。例えば1級事例で本人分で2800万円の後遺障害慰謝料が認められても,さらに近親者分として父300万円,母300万円というように基準とは別途の慰謝料が認められることが多い。

 

aryarya.jpgなぜ死亡の場合と重度後遺障害の場合でそのような違いがあるのですか?

 

 

02dog.jpg死亡の場合,例外的事情がない限り必ず近親者慰謝料が認められるし,近親者の多くが死亡した被害者本人分の慰謝料請求権を相続しており,近親者固有の慰謝料請求権を行使したか否かによって総慰謝料額に差が生じるのが相当でないため,予め近親者分を含めて死亡慰謝料の基準額を設けたと言える。これに対し,重度後遺障害の場合は,近親者であれば必ず固有の慰謝料が認められるわけではなく,実際に介護を担当するか否かどうかなど個別の事情を斟酌して近親者慰謝料を認めるか否かとその金額を算定するのが妥当なので,後遺障害慰謝料の基準額には近親者分は含めていないんだ。

 

mumutt.jpgなるほど。よく分かりました。 

 

慰謝料増額事由

hanya.jpg傷害慰謝料,後遺障害慰謝料,死亡慰謝料などが基準額より増額されることはないのですか?

 

 

02dog.jpg本来的には全事情が総合考慮され妥当な慰謝料が認定されるものだが,公平かつ適正迅速な事件処理のため,訴訟での慰謝料認定額は基準をベースとした定額化が進んでいる。もっとも,典型的な慰謝料増額事由がある場合には,増額は珍しいことではない。

 

mutt.jpg慰謝料増額事由にはどんなものがありますか?

 

 

02dog.jpg代表的なのは,事故態様や加害者の態度などの事情だ。加害者に故意や重過失(無免許,ひき逃げ,酒酔い,著しいスピード違反,殊更な赤信号無視等)のある事故態様であったり,加害者に著しく不誠実な態度等(救護しない,謝罪しない,虚偽ないし不合理な弁解等)がある場合,慰謝料増額事由として斟酌される。

 

punpun.jpg私の事故の加害者も,何回か見舞いと謝罪に来たものの全く誠意が感じられませんでした。これも慰謝料増額事由になりますか?

 

 

03dog.jpgその程度では「著しく」不誠実な態度とは言えない。大半の被害者は加害者に誠意がないと感じるものなので,それをいちいち慰謝料増額事由にしていたら基準の意味がなくなる。「被害者は加害者に対して不誠実だと感じるものである」ことを予め織り込んで基準額が形成されていると理解し,通常の想定を超えるような「著しい」不誠実さが外形上認められる場合にのみ慰謝料増額事由になると考えたほうがよい。君の例では一応謝罪には来ているのだから,著しく不誠実と評価するのは難しい。

 

hanya.jpgその他にはどんな慰謝料増額事由がありますか?

 

 

02dog.jpg被害者側の事情としては千差万別なものがあるが,例えば事故で流産したとか,被害者の親族が精神疾患に罹患したといった事情が慰謝料増額事由となり得る。

 

mutt.jpg事故態様や加害者側・被害者側の事情のほかに,慰謝料増額事由となるものはありますか?

 

 

02dog.jpg典型的な慰謝料増額事由とは性質が異なるが,そもそ慰謝料には他の損害認定と関連した補完的機能があると言われる。例えば,逸失利益の算定が困難又は不可能な後遺障害(醜状痕,歯牙障害,嗅覚障害,骨の変形障害など)に関し,慰謝料を増額して認定する例は多い。将来の手術費の算定が困難又は不可能な場合に,将来治療費としてではなく慰謝料の増額で斟酌するなどの例もあるよ。

弁護士費用その1

hanya.jpg弁護士に依頼して交通事故の損害賠償請求訴訟をした場合,弁護士費用は賠償されるのですか?

 

 

02dog.jpg訴訟であれば,通常は損害額の10%程度を弁護士費用として加算した額を請求額とすることが多いが,訴訟が判決で終われば,認定損害額の10%程度が事故と相当因果関係ある損害(弁護士費用相当額)として認められ,加害者側(被告・任意保険会社側)に負担させることになる。

 

aryarya.jpg実際に弁護士に支払った着手金と事件終了時に支払う報酬金の合計額が全額認められるわけではないということですか?

 

01dog.jpgそのとおり。実際に要する弁護士費用は被害者と弁護士間の契約で定めるものなので,裁判所が判決で認定する「弁護士費用相当額」の金額には影響しない。

 

hanya.jpgでは,裁判所が認める弁護士費用は常に認定損害額の10%なのですか?

 

 

03dog.jpgそうとは限らない。10%というのはあくまで目安であり,事案の難易度,認容額の大小,その他諸般の事情(事前に自賠責保険金を被害者請求で受領したかなど)を考慮して定められるので,10%より少なくなる場合もある。裁判所によっては独自の基準を用いているところもある。

 

mutt.jpg訴訟の終結方法には,「判決」の他に「裁判上の和解」があると聞きました。和解の場合でも弁護士費用は認められるのですか?

 

 

02dog.jpg「裁判上の和解」の場合,その和解金の内訳には通常は弁護士費用は計上されない。ただ,和解金には,判決の場合に加算される弁護士費用と遅延損害金の一定割合が「調整金」という名目で和解での認定損害額に加算されるのが通常だ。調整金はどちらかというと遅延損害金の代わりのようなものだが,弁護士費用とも無関係ではない。被害者側としては,「判決のリターン(弁護士費用と遅延損害金が全額加算)と和解案の調整金額の差額」と「判決のリスク(和解案より厳しい損害や過失の認定をされるおそれ)」を比較検討して,前者が後者を上回るなら和解せず判決に向かい,下回るなら和解案を受諾するのが合理的な選択となる。

弁護士費用その2

hanya.jpg自分の任意保険の弁護士特約(弁護士費用等補償特約)によって弁護士費用の支払いを受けられる場合,訴訟では弁護士費用相当額が加算されなくなるのですか?

 

02dog.jpg通常はそのような扱いにはならず,被害者に弁護士特約があるからといって,加害者は弁護士費用相当額の賠償義務を免れない(名古屋地判平22.2.19)。

 

hanya.jpgでは逆に,判決で弁護士費用が認定され,これを含む判決認容額の支払いを加害者側の任意保険会社から受けた場合,自分の任意保険の弁護士特約からさらに弁護士費用分の保険金の支払いを受けられるのですか?

 

01dog.jpgその点は,簡単に言えば「弁護士費用の二重取りはできない」のが原則だ。例えば,実際に弁護士に支払った弁護士費用の合計が500万円で,判決では弁護士費用相当額が400万円と認定され加害者の任意保険会社側から判決に基づきその支払いを受けた場合,自分の任意保険から弁護士特約で支払われるのは100万円だけになる。

 

aryarya.jpgその例では,弁護士特約の限度額が300万円だとしても,加害者側から400万円,さらに弁護士特約で300万円の,合計700万円の「弁護士費用」を得られるわけではないということですね。実際にかかった弁護士費用は500万円だったのですから,考えてみれば当たり前のことでした。

 

03dog.jpgなお,弁護士費用が損害として認められるのは,原則として訴訟解決した場合のみで,示談や交通事故紛争処理センターの場合は一切認められないと考えてよい。交通事故紛争処理センターの場合は同センターの取扱い上,弁護士費用を損害に計上しないことになってるし,加害者側の任意保険会社と直接話し合って解決する示談の場合も,弁護士費用分を上乗せして欲しいという要求に応じる保険会社はない。仮に応じたとしたら,それは弁護士費用以外の損害費目が相当に低額になっていて,弁護士費用分の上乗せ要求を飲んでもなお保険会社側に有利な示談金額になっているからだろう。よく注意したほうがいいね。

遅延損害金

hanya.jpg訴訟解決の場合は遅延損害金が賠償額に加算されると聞きました。これはどういうものですか?

 

 

01dog.jpg訴訟判決をもらった場合,事故日を起算日として賠償金の支払日まで,損害額に対して年間5%の金利が加算され,加害者側(任意保険会社側)はその支払い義務を負う。例えば,事故から2年11ヶ月後に損害額を1億円と認定した判決が下り,実際の賠償金支払日が判決の1か月後(事故から3年後)となった場合,1億円の5%である500万円の3年分である1500万円が遅延損害金額となる。結局,加害者側からは1億1500万円の支払いが受けられることになる。

 

hanya.jpg事故から年数が経っていれば,また損害額自体が大きければ,遅延損害金だけでかなりの金額になりますね。示談交通事故紛争処理センターで解決した場合は,遅延損害金は加算されないのですか?

 

02dog.jpg原則として加算されない。これは弁護士費用の取り扱いと同じだ(→弁護士費用その2)。なお,訴訟の場合でも,判決ではなく「裁判上の和解」で終結する場合は遅延損害金が全額加算されることはないが,通常は遅延損害金の一定割合が「調整金」という名目で加算される(→弁護士費用その1)。

 

mumutt.jpg遅延損害金が多額になると見込まれる場合は訴訟を選択すべき根拠が増すのですね。

 

 

03dog.jpgただ,注意したいのは,提訴前に自賠責保険金を受領している場合だ。詳しい説明は割愛するが,この場合における被害者に最も有利な遅延損害金の請求方法が平成16年の最高裁判決により確立している。交通事故を専門とする弁護士には常識だが,残念ながら,その最も有利な請求方法ではなく同判決以前の不利な請求方法により訴えを起こす弁護士は未だに多数いるのが現状だ。訴訟では請求しなかったものは認定されないので,交通事故に詳しくない弁護士に依頼した場合,遅延損害金の請求方法の選択の誤りという一点のミスだけで,最も有利な方式で請求した場合より総獲得額が数百万円以上も低額になってしまうことがある。弁護士選びは十分に気を付けたいところだ。

 

mutt.jpg請求の仕方だけでそんなに差が出てしまうのですね。

 

 

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