後遺障害逸失利益 〜算定方法〜

hanya.jpg後遺障害逸失利益って何ですか?

 

 

01dog.jpg後遺障害逸失利益とは,事故による後遺障害(後遺症)がなければ得られたはずの利益をいう。後遺障害の残存により労働能力が低下して収入が減少することによる損害と言い換えてもよい。

 

hanya.jpg休業損害とは何が違うのですか?

 

 

02dog.jpg簡単にいうと,休業損害は症状固定日までの「働けないことによる損害」で,後遺障害逸失利益は症状固定日以後の「働けないことによる損害」だ。具体的な差異は他にも色々あるが,それは追って説明する。

 

hanya.jpg後遺障害逸失利益はどのように算定されますか?

 

 

03dog.jpg基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数」と算定される。

 

 

aryarya.jpg事故前と比較して症状固定後の収入が減っていないときは,後遺障害逸失利益は0円になってしまうのですか?

 

 

01dog.jpgそのような古典的な考え方を「差額説」といい,損保側も事故前の収入減がない場合や少ない場合に差額説の立場から逸失利益を否定してくることがある。一方,損害を単純な事故前後の収入の差額と見るのではなく,後遺障害の残存による労働能力の喪失・低下それ自体を財産的損害と捉え,現実の減収の有無・程度は労働能力の喪失・低下を評価するための一事情にすぎないとする考え方が「労働能力喪失説」で,これに従えば減収がないからといって直ちに逸失利益が0円となるわけではない。

 

mutt.jpgどちらの見解が有力なのですか?

 

 

02dog.jpg現在の裁判実務では,厳格な差額説ではなく労働能力喪失説的な考え方が取り入れられている。減収の有無・程度が重要な判断材料となることは確かだが,それ以外にも被害者の年齢,性別,職種,後遺障害の部位・程度,等級表所定の労働能力喪失率などを総合的に評価して逸失利益を算定するんだ。

 

mumutt.jpg被害者の特別の努力や使用者の温情によって収入が維持できている場合もありますよね。

 

 

03dog.jpgそうだね。だからと言ってそれが生涯続くとは限らず,将来の昇給,昇格,転職等で不利に働き減収となる可能性もある。そこで,先に挙げたような要素が総合的に考慮されるわけだ。

後遺障害逸失利益 〜基礎収入総論〜

hanya.jpg後遺障害逸失利益基礎収入は,休業損害の基礎収入と同じように認定されるのですか?

 

 

01dog.jpg同じ部分も多いが,休業損害と逸失利益の性質の違いから基礎収入の認定には若干の差異がある。

 

 

aryarya.jpg休業損害と逸失利益の性質の違いって何ですか?

 

 

02dog.jpg「働けないことによる損害」は,症状固定日の前が休業損害,症状固定日の後が逸失利益の問題になるわけだが,休業損害は逸失利益に比べて期間は短く,かつ最終的な賠償請求時には過去の確定した損害であるのが通常だ。一方,逸失利益は将来に渡る収入の減少などを賠償するものであるから,期間はより長く,かつ賠償請求時には未確定の将来の損害になる。

 

mumutt.jpgその性質の違いによって基礎収入の認定も両者で異なってくるのですね。

 

 

03dog.jpgそのとおり。対象期間が限定的な休業損害では,直近かつ短期間(事故前3か月間など)の実収入をそのまま基礎収入とするのが最も実情に叶う場合が多い。一方,対象期間が将来の長期に及ぶ逸失利益では,より長期間(事故前年の1年間など)の実収入を原則とし,さらに年齢等によっては将来の変動を踏まえた平均賃金の採用が妥当な場合も多い,といった差異がある。

後遺障害逸失利益 〜給与所得者の基礎収入〜

hanya.jpg給与所得者基礎収入はどうなりますか?休業損害では,事故前3か月の給与を基礎収入とするのが通常であると聞きましたが。

 

01dog.jpg逸失利益の場合も事故前の実収入を基礎収入とするのが原則で,具体的には源泉徴収票や課税証明書等での立証が容易な事故前年の実収入を使うことが多い。

 

mutt.jpg例えば,事故前年より事故当年のほうが昇給して毎月の給与が上がっている場合で,事故発生が11月30日の勤務終了後の場合,賞与を考慮しなければ事故当年の事故日までの給与総額に11分の12を乗じて年額換算した金額のほうが,事故前年の実収入より多くなりますよね。このような場合も事故当年ではなく,より低い事故前年の実収入が基礎収入とされてしまうのですか?

 

02dog.jpgあくまで原則は「事故前の(事故当時の)実収入」なので,そういった形でより事故当時に近い実収入から年収を算出できるのであれば,敢えて事故前年の実収入に拘る理由がない。結局は被害者側がそれを合理的に主張・立証できるかの問題だ。

 

hanya.jpg事故前の実収入でなく平均賃金が基礎収入とされるのはどんな場合ですか?

 

 

03dog.jpg実収入が平均賃金を下回っている場合に,将来に渡り平均賃金を得られる蓋然性が認められる場合には,賃金センサスによる平均賃金が基礎収入として用いられる。平均賃金には性別,学歴計・学歴別,全年齢・年齢別など様々な区分があるので,被害者の属性や職業,実収入との乖離などを参考に,どの平均賃金を用いるべきかが決まる。

 

mumutt.jpg被害者が若いと平均賃金になりやすいと聞いたことがありますが。

 

 

01dog.jpg事故当時「概ね30歳未満」の若年労働者については,就労歴が浅いために低賃金である実収入を将来に渡る基礎収入として採用するのが酷であることや,学生ならば平均賃金を用いることとの均衡上,むしろ実収入ではなく平均賃金の採用が原則であると言ってよいほど,平均賃金が用いられることが多い。

後遺障害逸失利益 〜事業所得者の基礎収入〜

hanya.jpg事業所得者(個人事業主)基礎収入はどうなりますか?

 

 

01dog.jpg逸失利益においても基本的には休業損害の基礎収入と同様の認定がなされ,原則として事故前年の申告所得額が基礎収入となる。その他の留意事項も休業損害と共通する。

 

hanya.jpg給与所得者のように賃金センサスによる平均賃金が採用されることはないのですか?

 

 

02dog.jpg事業所得者においても,「概ね30歳未満」の若年者については平均賃金が採用されることが多い。また,確定申告をしていないが相当の収入があったと認められる場合には,平均賃金を参考として基礎収入が認定される場合がある。

 

mutt.jpgその他に休業損害の基礎収入と違うところはありますか?

 

 

03dog.jpg休業損害と異なり,原則として申告所得に固定経費分を上乗せして基礎収入とするという扱いはしない。

 

 

hanya.jpgそれはなぜですか?

 

 

01dog.jpg休業損害の場合,事業の維持・存続のために休業中にも支出を余儀なくされる固定経費があるからこれを損害として扱うわけだが,逸失利益では事業を継続していればその事業のために通常通り固定経費を支出しているだけのことで損害にあたらないし,廃業したならもはや事業の維持・存続のために固定経費の支出を余儀なくされるという関係が生じないから,やはり損害とならない。

 

mumutt.jpgそう言われてみればそうですね。

 

 

02dog.jpgただし,後遺障害による労働能力喪失の影響で売上が減少し,流動経費はそれに比例して減少したが固定経費は事故前と同程度の額であった場合,売上の減少幅以上に利益(所得)の減少幅が大きくなることになる。言い換えると,より少ない売上しか上げられなくなっているのに同じ額の固定経費の支出を余儀なくされ続けるという状態もあり得なくはないので,固定経費を何らかの形で逸失利益に斟酌するという考え方は一応成り立つように思われる。ただ,結局は利益(所得)の問題なので,基礎収入というより労働能力喪失率の認定で斟酌されるべき事情かもしれない。

後遺障害逸失利益 〜会社役員・家事従事者・失業者・高齢者の基礎収入〜

hanya.jpg会社役員基礎収入はどうなりますか?

 

 

01dog.jpg会社役員については,報酬のうち利益配当部分を除いた労務対価部分のみが基礎収入になるという点は休業損害と同じだ。ただし,休業損害と異なり逸失利益は長期の期間の損害を対象とするから,被害者の年齢その他の要素次第では,実収入ではなく平均賃金を参考に基礎収入を認定するのが妥当な場合がある。

 

hanya.jpg家事従事者(主婦)基礎収入はどうなりますか?

 

 

02dog.jpg家事従事者についても休業損害と同様で,賃金センサス女子学歴計全年齢平均賃金(平成22年は345万9400円)を基礎収入とすることが原則的扱いとなる。パート労働等の賃金を上乗せしないことや,高齢者であれば全年齢ではなく年齢別平均賃金や,年齢別をさらに一定割合に減額した金額が用いられる場合があることも同様だ。

 

aryarya.jpg一人暮らしの被害者の場合には,家事が金銭的価値を有する他人のための労働ではないから休業損害は認められないということでしたが,逸失利益も0になってしまうのですか?

 

03dog.jpg理屈上はそうなる。ただし,年金生活者を除けば「一人暮らしの家事従事者」は単なる無職者にすぎないから,そもそも家事従事者の問題ではない。無職者(失業者)として考えれば,労働能力と労働意欲があり,将来の就労の蓋然性が認められれば,失業前の実収入や平均賃金を参考に基礎収入が認定され,逸失利益が認められる得る。

 

hanya.jpg高齢者の基礎収入はどうなりますか?

 

 

01dog.jpgやはり,労働能力と労働意欲があり,将来の就労の蓋然性が認められれば,男女別の年齢別平均賃金等を参考とした基礎収入が認定され得る。

後遺障害逸失利益 〜幼児・学生・生徒の基礎収入〜

hanya.jpg就労開始前の幼児,生徒,学生基礎収入はどうなりますか?

 

 

01dog.jpg原則として,男女別の賃金センサス学歴計全年齢平均賃金を用いる。ただし,大学生又は大学への進学の蓋然性が認められる者は,大学卒全年齢平均賃金を用いる場合がある。

 

hanyaa.jpg男子平均賃金より女子平均賃金のほうがかなり低額ですが,不公平ではないですか?

 

 

02dog.jpg確かにそのような問題がある。そのため,近時の女性労働者の就労状況等に鑑み,今後男女間の賃金格差が縮小する方向性にあるとの観点から,「年少女子」については原則として男女を合わせた全労働者の学歴計全年齢平均賃金を基礎収入と認定する裁判例が一般的になってきている。

 

mutt.jpg年少女子」って,具体的に何歳までですか?

 

 

03dog.jpg少なくとも中学卒業までは問題なく年少女子の範囲に含まれる。高校生は微妙なところだが,被害者側では当然男女平均賃金を用いるべきと主張することになる。

 

hanya.jpgそのような基礎収入を前提として,未就労者の逸失利益はどのように算定されるのですか?

 

 

01dog.jpg「基礎収入×労働能力喪失率×{(67歳−症状固定時の年齢)年のライプニッツ係数−(就労開始年齢−症状固定時の年齢)年のライプニッツ係数}」と算定される。

後遺障害逸失利益 〜労働能力喪失率その1〜

hanya.jpg逸失利益の算定に出てくる労働能力喪失率とは,どのように決めるのですか?

 

 

01dog.jpg労働能力喪失率は,後遺障害による労働能力の低下の程度を表したもので,「後遺障害別等級表」において等級ごとに以下のように定められている。例えば,9級の後遺障害なら35%の労働能力が失われた状態であると評価するわけだ。

 

第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級
100% 100% 100% 92% 79% 67% 56%
第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
45% 35% 27% 20% 14% 9% 5%

 

mutt.jpgこの数値は誰がどういう基準で決めたのですか?

 

 

02dog.jpg元々は労災の障害補償の算定で用いられている数値を基準にしたもので,科学的・統計的に確たる根拠があるわけではない。かと言って,何の基準もなければ交通事故被害者の損害算定の画一性・公平性が保てないので,一応この数値を目安とすることが賠償実務となっている。

後遺障害逸失利益 〜労働能力喪失率その2〜

hanya.jpgある等級について,喪失率表以上あるいは以下の労働能力喪失率が認定される場合もあるのですか?

 

 

01dog.jpgもちろんだ。喪失率表はあくまで参考基準なので,被害者の職業,年齢,性別,後遺障害の部位・程度,事故前後の就労状況や減収の程度等を総合的に判断して実際の労働能力喪失率を認定していくことになる。

 

mutt.jpgでは,例えば自賠責で9級の認定を受けたら逸失利益の算定では労働能力喪失率35%が必ず用いられる,というわけではないのですね。

 

02dog.jpgそのとおりだ。9級であれば被害者側は35%以上の喪失率を主張することもあるし,逆に損保側は35%以下の喪失率を主張してくることも多い。裁判所の判断も自賠責で9級だから必ず35%にするというものではなく,先ほど挙げた様々な判断要素を考慮して妥当な喪失率を認定することになる。

 

aryarya.jpgそれでは,結局喪失率表による基準はあまり意味がないということですか?

 

 

03dog.jpgそうではない。判断の画一性・公平性のために喪失率表が事実上の「基準」になっている以上は,喪失率表以上あるいは以下の喪失率を主張する側が,説得力ある主張・立証をしない限り,そう簡単に喪失率表と大きく異なる喪失率が認定されはしない。

 

mumutt.jpg基準は基準としてやはり重みがあるということですね。

 

 

01dog.jpgただし,特定の後遺障害については,その等級に対応した喪失率表上の喪失率がそもそも実態に合っていないと考えられているものがある。鎖骨・骨盤骨・脊柱などの変形障害,歯牙・嗅覚・味覚障害,醜状障害などが代表的な例で,例えば12級の嗅覚障害があっても,料理人などを除く通常の労働者はそれで14%の労働能力が喪失するとはいえない,というような判断がなされやすい。

後遺障害逸失利益 〜労働能力喪失期間その1〜

hanya.jpg労働能力喪失期間はどのように決められますか?

 

 

01dog.jpg労働能力喪失期間は,後遺障害による労働能力低下の影響が及ぶ期間のことだ。一般的に67歳までが就労可能年数と考えられているので,原則として「症状固定時の年齢から67歳までの年数」が労働能力喪失期間となる。

 

mutt.jpg症状固定時に67歳以上の被害者はどうなるのですか?

 

 

02dog.jpg67歳以上に限らず,高齢者について「67歳までの年数」が「平均余命年数の2分の1」より短いときは,「平均余命年数の2分の1」が労働能力喪失期間として採用される。平成22年簡易生命表を基準とすると,男性は症状固定時に54歳以上,女性は48歳以上で,「平均余命年数の2分の1」が「67歳までの年数」を上回る。

 

hanya.jpgまだ就労していない学生の労働能力喪失期間の始期はどう決められますか?

 

 

03dog.jpg未就労者の労働能力喪失期間の始期は,原則として18歳とし,大学進学等で18歳以後の就労を前提とする場合には,修学終了予定年齢(大卒なら通常22歳)を始期とする。

後遺障害逸失利益 〜労働能力喪失期間その2〜

hanya.jpg労働能力喪失期間終期は常に「67歳」か「平均余命年数の2分の1」と認定されるのですか?

 

 

01dog.jpgそれが原則だが,被害者の性別・年齢・職業・健康状態・能力等を総合的に判断し,原則と異なる終期が認定される場合もある。

 

hanya.jpg後遺障害の等級や性質によっても変わることはあるのですか?

 

 

02dog.jpg比較的軽度の障害であるむち打ち症(頚部・腰部捻挫)の場合,12級では5〜10年,14級では2〜5年程度が一応の目安とされる場合が多い。また,それ以外の後遺障害でも,年齢,障害の内容・程度,職種・仕事内容により後遺障害による労働への影響が徐々に小さくなると考えられる場合には,労働能力喪失期間が限定されたり,逓減方式が採用されることがある。

 

aryarya.jpg逓減方式って何ですか?

 

 

03dog.jpg逓減方式」とは,例えば11級の場合,症状固定から10年間は喪失率表どおり20%,その後10年間は14%,さらにその後の67歳までは5%というように,期間を区切って段階的に喪失率を減らして算定する方式だ。

後遺障害逸失利益 〜退職金差額請求その1〜

hanya.jpg死亡や重度後遺障害が原因で退職を余儀なくされた場合,退職時点で退職金をもらっても,本来の定年まで務め上げたときの退職金よりは低額になりますよね。この退職金差額分は賠償されるのですか?

 

01dog.jpg退職金差額請求が認められるためには,勤務先に退職金支給規定があること,事故の受傷(死亡又は後遺障害)と退職との間に因果関係があること,被害者が定年退職時まで勤務を継続する蓋然性及び定年退職時に退職金が支給される蓋然性があることが必要だ。

 

aryarya.jpg「被害者が定年退職時まで勤務を継続する蓋然性及び定年退職時に退職金が支給される蓋然性」と言われても,よく分かりません・・・。

 

02dog.jpg分かりやすい比較で言えば,定年まで長い20代より短い50代のほうが,転職を繰り返しているより一つの勤務先で継続就労しているほうが,勤務先が中小企業より大企業や公的機関であるほうが,より退職金差額請求が認められやすいということだ。

 

mutt.jpgでは,例えば勤務先の定年が60歳,被害者が事故時55歳で退職を余儀なくされ,定年退職時の退職金見込額が2000万円に対し55歳での実際の退職金が1600万円であった場合,企業規模などその他の要件に問題がなければ,「2000万ー1600万円=400万円」の退職金差額が損害として認められるのですね。

 

03dog.jpgそれは違う。定年までの期間に係る中間利息を控除して計算するので,その事例では「2000万円×5年のライプニッツ係数(現価)0.7835ー1600万円=ー33万円」となり,マイナスとなってしまうから退職金差額という損害自体の発生が認められないことになる。

 

hanyaa.jpg結構厳しいですね。

 

 

01dog.jpg定年までの年数が長いほど中間利息控除による計算で損害額がマイナスになってしまうので,退職金差額請求がなされる事案はかなり少ないんだ。

後遺障害逸失利益 〜退職金差額請求その2〜

mutt.jpgでは,中間利息控除による計算をしてもなお残額がある場合,必ず退職金差額請求をするわけですね。

 

 

01dog.jpg一見そう思えるが,実際は請求しないことが多い。

 

 

aryarya.jpgなぜですか?少しでも退職金差額があれば請求して損はないはずでは。

 

 

02dog.jpgところが,損する場合がある。これは逸失利益全体の算定と関係する問題だが,逸失利益は通常,定年退職を考慮せずに67歳までを就労期間(労働能力喪失期間)として算出する。だが定年は多くの場合67歳未満だ。

 

aryarya.jpgあっ,退職金差額請求のために例えば勤務先の定年が60歳と主張・立証した場合,就労期間は通常の67歳ではなく60歳までとして逸失利益を算定すべき,と言われてしまいます。

 

03dog.jpgと言っても,定年後も再就職等で働くこともあるし,就労可能年齢という意味では67歳という通常の基準に合理性があるので,そのような相手方の反論が直ちに認められるわけではない。

 

hanya.jpgでは,どのような問題があるのですか?

 

 

01dog.jpg例えば,被害者の実収入が平均賃金を上回る事案で定年が60歳の場合,60歳まではその実収入を基礎収入とするのは問題ないが,定年後は仮に就労しても大幅に収入が下がる可能性が高いので,定年後67歳までの7年間は実収入ではなくより低い60歳代の平均賃金を基礎収入として用いるのが論理的と考えられる。にもかかわらず,通常は67歳まで一律に同一額の基礎収入(平均賃金より高い実収入)を用いて逸失利益を算定することが多いが,これは定年退職を考慮しない代わりに退職金も考慮しないためであると説明されているんだ。

 

mumutt.jpgなるほど。逆に,退職金差額を損害として認めるなら,定年を前提とすることになるのだから,その定年以降はより低額な平均賃金を用いるのが論理的だ,ということですね。

 

02dog.jpgそのとおり。結局,中間利息控除後の退職金差額が残存しない場合はもちろん,残存するとしても,その額が定年後の基礎収入により低い平均賃金を使われてしまうことによる逸失利益全体の減少見込額より少額であれば,退職金差額請求はしないほうがよいし,実際に大多数の事例でそのような場合に当てはまってしまう。だから実務上は退職金差額請求をしないことが圧倒的に多いんだ。

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